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透析について【体重管理編】

投稿日: 2020年11月13日(金)

いつもお世話になっております。

臨床工学技士のヨコミツです。

 

いつも休日には息子の虫取りに付き合わされています。

 

息子よ。

父も虫は好きさ。

 

あぁ、とっても大好きさ。

 

大きい虫とか、クワガタ、カブトムシで心を躍らせるさ。

 

しかしな。

息子よ。

 

寒くなって来たから、もう虫取れないよ!

越冬できる虫は、冬ごもり始めてるよ!?

 

いい加減に

父は、野球とかサッカーとかしたいよね・・・

 

まだ無理かなと思いつつ、息子の趣味に付き合います。

 

現在、我が家で生き残っているのは、妻が面倒見てくれているカタツムリが1匹です。

 

自己紹介はこの辺に致します。

 

 

 

 

本日は(医)髙橋クリニックのHPを閲覧頂き

誠にありがとうございます。

 

 

 

ということで、

 

 

いつも通り透析しに来て下さいね。

 

 

体重増加少なめで来て下さいよ。

お願いします。

 

 

しかし…

皆さん気になりませんか?

 

 

 

 

なぜ「体重増加少なめで来てね」と言うのか?

 

 

 

 

毎日、ご飯も食べているし、ノドも乾くし

出されたお薬もいっぱい飲んでるし

 

教本通りの

1日空きで増加、3%程度。

2日空きで増加、5%程度。

 

そんなん無理でしょうが!!

透析室のスタッフたちめぇ・・・

「馬鹿にしやがってぇ~!」

という患者様の声が聞こえて来るようです。

 

いいえ。

馬鹿になどしておりません!!

 

 

 

意味がございます!

 

 

 

まず初めに、

なぜ「体重増加少なめで来てね」なのか?を説明させて頂きます。

 

 

 

体重増加が多いと、どうなるんでしょうか??

 

 

 

4時間透析の患者様が

ドライウェイト(目標体重)は50㎏とします。

透析してない間に、体重が3.8㎏増加して

53.8㎏の体重で来院されたとします。

患者A様「あぁ~、3.8㎏増加で、体に入る透析回路内液の分(約200ml)を足して、4㎏の除水かぁ~」

 

 

 

で、済むはずがない泣

 

 

 

では手始めに、

 

尿として排泄できなかった不要な水分は、

透析の時に

どうやって?

どこから抜くんでしょ??

(ちなみに、体から余分な水抜くことを「除水」と言います。)

 

 

いつも皆さんがストレスに感じている、あれ!

あれですよ、あれ!!

 

ヴァスキュラー・アクセス

(通称:シャント)

穿刺しているでしょ?

(通称:針刺し)

 

そうです。

 

水分は、血管に針を刺して、血液から抜くのです!!

 

だから、ヴァスキュラーアクセス(通称:シャント)は大事なんですねー!

 

また一般に、血液量(L)= 体重 ÷ 13

と言われていますから

患者様の血液量は、一体、何Lなんでしょうか?

 

おまけで増加量をプラスした体重:53.8㎏で

計算してみましょう。

53.8 ÷ 13 = 4.1384・・・・

 

約4.2Lですねー!!

 

それから

4㎏を4時間で全部除水しようと考えると

4 ÷ 4 = 1(L/h)

 

ここで、透析スタッフのヨコミツは考えるわけです。

ヨコミツ「うーーーん・・・」

「1時間当たりに1Lも除水しないといけないのかー・・・」

「出来るかなぁ?」

「困った・・・」と。

 

え?

 

何ですって?

 

この計算に?

 

何の関係があんのかって??

 

まぁ、少し読み進めてみて下さい。

 

さて、ここで皆さんの体の中に溜まった水分は、どこに行くでしょう?

まずは、血管の中です。

 

血管の中に溜まって行くと

血圧が上がります!!

 

 

さらに溜まると

心臓がパンパンの水風船のみたいになって、

ちゃんと動けなくなります!!

 

そこから、さらに水分が溜まると・・・

 

 

血管の中に水分がとどまることが不可能になって

 

体の隙間という隙間や肺などの空間に流れ込んでいきます。

 

 

 

それが浮腫み溢水(呼吸困難)という形で現れます

 

 

 

今、3.8㎏の水分による増加から

 

おまけで

2.8㎏は血管の中に血液として入っているとしましょうか。

 

すると

血液量:4.2 + 2.8 = 7(L)ですねー!!

 

 

では

透析スタート!!

1時間目 血液量:7 - 1 = 6(L)

2時間目 血液量:6 - 1 = 5(L)

3時間目 血液量:5 - 1 = 4(L)

4時間目 血液量:4 - 1 = 3(L)

 

透析が終わるまでに

血液が3Lになりましたねーーー!!!

 

めでたし

めでたしぃ~~

 

 

で、終わるわけないがない…

 

 

ここで豆知識です。

人間は、短期的に全血液の20%が失われる

ショックを起こして意識を失います。

30%が失われると

命を落とします。

 

 

そして、

計算してみましょう。

ドライウェイト(目標体重)の血液量は4.2Lでした。

 

その内の20%が失われた状態は

4.2 × 0.8 = 3.36(L)

血液量が、それを下回れば

意識消失。

 

また、30%が失われた状態なら

4.2 × 0.7 = 2.94(L)

を下回ると

命を落とすという事です。

 

要するに

 

透析開始3~4時間の間で

意識を消失して

 

最後

ギリギリの所で命を取り留めている事になります・・・

 

 

とは書きましたが

まぁ、こんな単純なものでは無いです。

 

 

ただし

 

 

これに近しい現象が体の中に起こっているのは確かです。

そして、こうならない様に皆さんの体は抵抗を見せます。

 
   

 

それが「プラズマ・リフィリング」です。

 

 

皆さんの体の中に溜まった水分で、血管の外、

体の隙間に逃げた水分

それが、血管の中に返ってくることを

「プラズマ・リフィリング」と呼びます。

 

 

プラズマ・リフィリングは、患者様各個人で速度が違いますが

一般的に、体重1kg当たり5(mL/h)程度と言われてますので

(増加量込み)体重が53.8kgの患者様は

53.8 × 5 = 269(mL)

269 ÷ 1000 = 0.269(L)

 

約0.3(L/h)の速さで

血管の中に水分が返って来るとします。

 

※ここまでの計算は全て、かなり甘めに見積もっています。

 

 

 

 

ではでは、

再度透析スタート!!

1時間目 血液量:7 - 1 + 0.3 = 6.3(L)

2時間目 血液量:6.3 - 1 + 0.3 = 5.6(L)

3時間目 血液量:5.6 - 1 + 0.3 = 4.9(L)

4時間目 血液量:3.9 - 1 + 0.3 = 3.2(L)

 

 

結果

 

 

ギリギリ意識消失を免れました・・・

 

 

 

上述したように

「プラズマ・リフィリング」があったとしても

その速度が追い付かない場合は血液がどんどん少なくなります。

 

元々、血管外には1Lしか水分が無かったですから、

4時間目のプラズマリフィリングはありませんよね。

 

そして

 

血圧の低下

有痛性筋痙攣(こむら返り)

意識消失など

が発生します。

 

 

また

「血管の中に血液が少ない状態」=「血管内脱水」になると

 

 

血液がドロドロに濃縮されて、様々な血管での流れを悪くします。

 

 

生命活動にそんなに影響しないような血管だったら良いですが、

 

 

 

もしですよ?

 

 

 

もし、ヴァスキュラ―・アクセスを詰まらせたら?

 

透析できません。

 

 

もし、脳の血管を詰まらせたら・・・?

 

身体に障害が発生するかも・・・

 

 

もしも、心臓の大事な血管を詰まらせたら・・・?

 

心臓が止まるかも・・・

 

 

考えただけで、ゾッとしませんか??

 

 

 

 

それを防ぐ為にも、1日空きでの増加を3%程度。

2日空きでの増加を5%程度にして頂きたいのです。

 

 

 

ドライウェイト(目標体重)は50㎏の患者様が

5%の体重増加で

50 × 1.05 = 52.5

体重の増加は2.5kg

 

体に入る透析回路内液の分(約200ml)を足して

 

2.7Lの除水をします。

 

これを4時間で割ると

2.7 ÷ 4 = 0.675

 

1時間毎におよそ約0.68Lの水分が血液量からマイナスされますね。

 

そして、体重52.5kgの患者様の血液量は

52.5 ÷ 13 = 4.03846・・・・

 

おまけで約6.0Lとしましょうか。

 

そして、「プラズマ・リフィリング」は

52.5 × 5 ÷ 1000 = 0.2625 ≒ 約0.26

 

 

 

 

では

透析スタート!!

1時間目 血液量:6 - 0.68 + 0.26 = 5.58(L)

2時間目 血液量:5.58 - 0.68 + 0.26 = 5.16(L)

3時間目 血液量:5.16 - 0.68 = 4.48(L)

4時間目 血液量:4.74 - 0.68 = 3.8(L)

 

透析が終わるまでに

血液が3.8L残せましたーーー!!!

 

※体外に0.5Lしか水分が無かったので、3・4時間目のプラズマリフィリングは考慮されていません。

 

ドライウェイト(目標体重)50㎏の患者様の

血液量は

50 ÷ 13 = 3.8461・・・

約3.85Lなので

 

安全に透析を終了できるという計算になりました!

 

 

皆さん、体にはお気を付けください!!

 

 

 

                             臨床工学技士 與古光

 

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