いつもお世話になっております。
臨床工学技士のヨコミツです。
いつも休日には息子の虫取りに付き合わされています。
息子よ。
父も虫は好きさ。
あぁ、とっても大好きさ。
大きい虫とか、クワガタ、カブトムシで心を躍らせるさ。
しかしな。
息子よ。
寒くなって来たから、もう虫取れないよ!
越冬できる虫は、冬ごもり始めてるよ!?
いい加減に
父は、野球とかサッカーとかしたいよね・・・
まだ無理かなと思いつつ、息子の趣味に付き合います。
現在、我が家で生き残っているのは、妻が面倒見てくれているカタツムリが1匹です。
自己紹介はこの辺に致します。
本日は(医)髙橋クリニックのHPを閲覧頂き
誠にありがとうございます。
ということで、
いつも通り透析しに来て下さいね。
体重増加少なめで来て下さいよ。
お願いします。
しかし…
皆さん気になりませんか?
なぜ「体重増加少なめで来てね」と言うのか?
毎日、ご飯も食べているし、ノドも乾くし
出されたお薬もいっぱい飲んでるし
教本通りの
1日空きで増加、3%程度。
2日空きで増加、5%程度。
そんなん無理でしょうが!!
透析室のスタッフたちめぇ・・・
「馬鹿にしやがってぇ~!」
という患者様の声が聞こえて来るようです。
いいえ。
馬鹿になどしておりません!!
意味がございます!
まず初めに、
なぜ「体重増加少なめで来てね」なのか?を説明させて頂きます。
体重増加が多いと、どうなるんでしょうか??
4時間透析の患者様が
ドライウェイト(目標体重)は50㎏とします。
透析してない間に、体重が3.8㎏増加して
53.8㎏の体重で来院されたとします。
患者A様「あぁ~、3.8㎏増加で、体に入る透析回路内液の分(約200ml)を足して、4㎏の除水かぁ~」
で、済むはずがない泣
では手始めに、
尿として排泄できなかった不要な水分は、
透析の時に
どうやって?
どこから抜くんでしょ??
(ちなみに、体から余分な水抜くことを「除水」と言います。)
いつも皆さんがストレスに感じている、あれ!
あれですよ、あれ!!
ヴァスキュラー・アクセスに
(通称:シャント)
穿刺しているでしょ?
(通称:針刺し)
そうです。
水分は、血管に針を刺して、血液から抜くのです!!
だから、ヴァスキュラーアクセス(通称:シャント)は大事なんですねー!
また一般に、血液量(L)= 体重 ÷ 13
と言われていますから
患者様の血液量は、一体、何Lなんでしょうか?
おまけで増加量をプラスした体重:53.8㎏で
計算してみましょう。
53.8 ÷ 13 = 4.1384・・・・
約4.2Lですねー!!
それから
4㎏を4時間で全部除水しようと考えると
4 ÷ 4 = 1(L/h)
ここで、透析スタッフのヨコミツは考えるわけです。
ヨコミツ「うーーーん・・・」
「1時間当たりに1Lも除水しないといけないのかー・・・」
「出来るかなぁ?」
「困った・・・」と。
え?
何ですって?
この計算に?
何の関係があんのかって??
まぁ、少し読み進めてみて下さい。
さて、ここで皆さんの体の中に溜まった水分は、どこに行くでしょう?
まずは、血管の中です。
血管の中に溜まって行くと
血圧が上がります!!
さらに溜まると
心臓がパンパンの水風船のみたいになって、
ちゃんと動けなくなります!!
そこから、さらに水分が溜まると・・・
血管の中に水分がとどまることが不可能になって
体の隙間という隙間や肺などの空間に流れ込んでいきます。
それが浮腫みや溢水(呼吸困難)という形で現れます
今、3.8㎏の水分による増加から
おまけで
2.8㎏は血管の中に血液として入っているとしましょうか。
すると
血液量:4.2 + 2.8 = 7(L)ですねー!!
では
透析スタート!!
↓
1時間目 血液量:7 - 1 = 6(L)
↓
2時間目 血液量:6 - 1 = 5(L)
↓
3時間目 血液量:5 - 1 = 4(L)
↓
4時間目 血液量:4 - 1 = 3(L)
透析が終わるまでに
血液が3Lになりましたねーーー!!!
めでたし
めでたしぃ~~
で、終わるわけないがない…
ここで豆知識です。
人間は、短期的に全血液の20%が失われると
ショックを起こして意識を失います。
30%が失われると
命を落とします。
そして、
計算してみましょう。
ドライウェイト(目標体重)の血液量は4.2Lでした。
その内の20%が失われた状態は
4.2 × 0.8 = 3.36(L)
血液量が、それを下回れば
意識消失。
また、30%が失われた状態なら
4.2 × 0.7 = 2.94(L)
を下回ると
命を落とすという事です。
要するに
透析開始3~4時間の間で
意識を消失して
最後
ギリギリの所で命を取り留めている事になります・・・
とは書きましたが
まぁ、こんな単純なものでは無いです。
ただし
これに近しい現象が体の中に起こっているのは確かです。
そして、こうならない様に皆さんの体は抵抗を見せます。
それが「プラズマ・リフィリング」です。
皆さんの体の中に溜まった水分で、血管の外、
体の隙間に逃げた水分
それが、血管の中に返ってくることを
「プラズマ・リフィリング」と呼びます。
プラズマ・リフィリングは、患者様各個人で速度が違いますが
一般的に、体重1kg当たり5(mL/h)程度と言われてますので
(増加量込み)体重が53.8kgの患者様は
53.8 × 5 = 269(mL)
269 ÷ 1000 = 0.269(L)
約0.3(L/h)の速さで
血管の中に水分が返って来るとします。
※ここまでの計算は全て、かなり甘めに見積もっています。
ではでは、
再度透析スタート!!
↓
1時間目 血液量:7 - 1 + 0.3 = 6.3(L)
↓
2時間目 血液量:6.3 - 1 + 0.3 = 5.6(L)
↓
3時間目 血液量:5.6 - 1 + 0.3 = 4.9(L)
↓
4時間目 血液量:3.9 - 1 + 0.3 = 3.2(L)
結果
ギリギリ意識消失を免れました・・・
上述したように
「プラズマ・リフィリング」があったとしても
その速度が追い付かない場合は血液がどんどん少なくなります。
元々、血管外には1Lしか水分が無かったですから、
4時間目のプラズマリフィリングはありませんよね。
そして
血圧の低下
有痛性筋痙攣(こむら返り)
意識消失など
が発生します。
また
「血管の中に血液が少ない状態」=「血管内脱水」になると
血液がドロドロに濃縮されて、様々な血管での流れを悪くします。
生命活動にそんなに影響しないような血管だったら良いですが、
もしですよ?
もし、ヴァスキュラ―・アクセスを詰まらせたら?
透析できません。
もし、脳の血管を詰まらせたら・・・?
身体に障害が発生するかも・・・
もしも、心臓の大事な血管を詰まらせたら・・・?
心臓が止まるかも・・・
考えただけで、ゾッとしませんか??
それを防ぐ為にも、1日空きでの増加を3%程度。
2日空きでの増加を5%程度にして頂きたいのです。
ドライウェイト(目標体重)は50㎏の患者様が
5%の体重増加で
50 × 1.05 = 52.5
体重の増加は2.5kg
体に入る透析回路内液の分(約200ml)を足して
2.7Lの除水をします。
これを4時間で割ると
2.7 ÷ 4 = 0.675
1時間毎におよそ約0.68Lの水分が血液量からマイナスされますね。
そして、体重52.5kgの患者様の血液量は
52.5 ÷ 13 = 4.03846・・・・
おまけで約6.0Lとしましょうか。
そして、「プラズマ・リフィリング」は
52.5 × 5 ÷ 1000 = 0.2625 ≒ 約0.26
では
透析スタート!!
↓
1時間目 血液量:6 - 0.68 + 0.26 = 5.58(L)
↓
2時間目 血液量:5.58 - 0.68 + 0.26 = 5.16(L)
↓
3時間目 血液量:5.16 - 0.68 = 4.48(L)
↓
4時間目 血液量:4.74 - 0.68 = 3.8(L)
透析が終わるまでに
血液が3.8L残せましたーーー!!!
※体外に0.5Lしか水分が無かったので、3・4時間目のプラズマリフィリングは考慮されていません。
ドライウェイト(目標体重)50㎏の患者様の
血液量は
50 ÷ 13 = 3.8461・・・
約3.85Lなので
安全に透析を終了できるという計算になりました!
皆さん、体にはお気を付けください!!
臨床工学技士 與古光
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